簡易パルス電子負荷の作成

■概要

ステップ応答を見ることの出来る簡易的な電子負荷を作成しました。

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簡易パルス電子負荷回路

 

■回路図、動作原理

回路図を下記に示します。

単三電池を昇圧することで接地されていない電源を作り、これでトランジスタQ1のベースを駆動します。

トランジスタQ1のエミッタには帰還抵抗が噛ませてあり、コレによってエミッタ電流を制限しています。(5V*180Ω/(100Ω+180Ω)-0.6V)/51Ω=51.3mAのエミッタ電流が流れるはずです。

エミッタ電流=ベース電流+コレクタ電流ですが、ベース電流の分は浮いている電源の方に戻っていくため電流検出抵抗R4にはコレクタ電流のみが流れます。

SMAコネクタの先には50Ω受けにしたオシロスコープを接続します。SMAコネクタからは1V/Aの電流検出モニタ信号が出てきます。ここは一見伝送線路に不整合が起きているように見えますが、50ΩのSMAケーブルを接続し50Ω終端したオシロスコープを接続すれば回路上は「1Ωの電流検出抵抗に50Ωの抵抗を並列接続しただけ」のようにみえるので不要な反射などは起きません(多分)。

PICマイコン12F1840は10Hzの矩形波を作っているだけです。少しもったいないですが、矩形波を作る適当なICがなかったのでPICマイコンを使用しました。

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パルス電子負荷回路図

■動作波形

動作波形を下記に示します。

オシロスコープとの接続に使用したケーブルは秋月で売っている1.5mのSMAケーブルです。

PICマイコンのせいなのかDCDCコンバータのせいなのかわかりませんがノイズが酷く、オシロスコープのトリガに帯域制限を掛けないとトリガがうまくかかりませんでした。

電流はHighレベルのときにおおよそ38mAほど流れています。立ち上がり時間はおおよそ10ns程度です。

20ns程度の周期でリンギングが発生していますが、終端はきちんとしているので伝送線路上で反射しているわけではないはずです。

 

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SMAコネクタからのモニタ波形(50ms/div)

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SMAコネクタからのモニタ波形(20ns/div)

■追加実験(リンギングの原因調査)

リンギングの原因について調べて見るために追加実験を行いました。

オシロスコープとパルス電子負荷回路をつなぐケーブルを1.5m→3mに変更して波形を取得しました。リンギングが伝送線路の不整合による反射が原因である場合はリンギングの周期が2倍になるはずです。

結果の波形を下記に示します。波形が2つ並んでいますがこれは

黄色い波形:1.5mのSMAケーブル使用時(前述の実験と同じ波形)

白い波形:3mのSMAケーブル使用時

です。

SMAケーブルを1.5m→3mに変えると周期が長くなっていますが、2倍にはなっていません。よって伝送線路の反射によるリンギングなどではないとわかりました。

おそらくですが、SMAケーブルが容量性負荷となってしまいトランジスタが発振気味になりリンギングが起きてしまったのではないかと思われます。

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追加実験波形(白=3m/黄色=1.5mのSMAケーブル使用時の波形)